新築物件として木の家に魅力を感じつつも、「火事が心配」「耐火性が不安」と考える方も少なくないでしょう。しかし、現代の木造建築は技術の進歩によって、耐火性が大きく向上しています。木造建築の耐火性についての知識をぜひ深めてみてください。
木の家が「燃えやすい」というのは、過去の出来事やイメージから生まれた誤解といえるかもしれません。木は古くから薪として燃料に使われてきたことや、江戸時代の大火、関東大震災、東京大空襲などで木造住宅の多い地域が被害を受けた出来事が、人々の記憶に強く残っているため、木の家は燃えやすいという印象を持たれやすいのです。
古来から昭和の中頃までは、木造住宅が火災に弱いとされていたのも事実です。しかし、現在では技術の進歩により耐火性が大きく向上しています。さらに、木材には火に強い特性も備わっています。以下に、具体的な特色を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
バーベキューで火起こしをした経験がある方なら、太い薪に直接火をつけてもなかなか燃え広がらないことをご存じかもしれません。木材は火が付くと、まず表面が黒く炭化し、この炭化層が熱の伝達を抑えるため、芯まで燃えるのに時間がかかります。この性質によって、消火作業の時間を確保しやすくなり、建物の倒壊リスクを軽減する効果があります。
出典:J-STAGE「木造建築の防耐火性能 ~火事に負けない木造をつくる~」
「木造と鉄骨造の住宅は、どちらが火災に長く耐えられるか?」と聞かれれば、多くの方が鉄骨造と答えるかもしれません。しかし実際には、木造の方がより長時間構造を維持できる場合が多いのです。その理由は木材の熱伝導率の低さにあります。木は表面が炭化すると内部まで熱が伝わりにくくなるのに対し、鉄は熱がどんどん伝わってしまいます。ある実験では、鉄骨造は火災発生から10分で建物の強度が10%にまで低下したのに対し、木造は10分後でも80%の強度を保っていたというデータが示されています。
防火木材は大きく3つに分類され、加熱開始後5分間燃えないものが「難燃木材」、10分間耐えるものが「準不燃材料」、20分間耐えるものが「不燃木材」とされています。難燃木材には難燃合板や表面を石膏で覆ったものが多く、不燃木材は木材をコンクリートなどで補強したものが一般的です。これらは元々、病院や劇場など人が多く集まる建物の防火性向上のために開発されましたが、近年では一般住宅にも採用されるケースが増えています。
出典:J-STAGE「防火木材における白華の発生要因の検討」
耐火構造は、火災時に建物の主要構造部(柱、梁、床、屋根、階段など)が一定時間、火災による倒壊や延焼を防ぐ性能を持つ構造です。 具体的には、主要構造部が火災終了までの間、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊などの損傷を生じないことが求められます。
準耐火構造は、主要構造部が一定時間、火災による加熱を受けても倒壊や延焼を防ぐ性能を持つ構造を指します。
木造住宅が基準をクリアするためには、主要構造部に対して、耐火性能を確保するための被覆を施す必要があります。 また、建築基準法で定められた技術的基準に適合する設計が必要です。さらに、 国土交通大臣が定めた構造方法や、大臣認定を受けた構造方法を用いることが求められます。
出典;国土交通省「難燃処理木材外装の経年劣化を考慮した防火性能評価手法の技術開発」
万一火災が発生した場合に備え、火が燃え広がりにくい構造にしておくことも重要です。ポイントは、火の通り道をできるだけ減らすことです。例えば、柱や梁、筋交いで構成する軸工法よりも、建物を面で構成する2×4工法の方が耐火性に優れているとされています。また、防火ドアや防火ガラスを採用することも、火の通り道を減らす有効な方法です。
室内での火災発生や延焼を防ぐためには、家具や内壁、内装材を燃えにくい素材にすることも効果的です。例えば、家具や建具に難燃木材を取り入れたり、内壁を石膏ボードにするなどの工夫も有効です。
木の家は多くの方が抱いているイメージとは異なり、一定の耐火性能を備えています。さらに、対策や工夫を加えることで、耐火性をより向上させることも可能です。これから木の家の建築を検討されている方は、耐火性をどのように高めるかについてもぜひ考えてみてください。